幼児期に鉄分が大切な理由を管理栄養士が解説

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血を作るもとになる『鉄分』は幼児期に必要な重要な栄養素の一つ。

離乳食の始まる6ヶ月頃から不足しやすい栄養素として、積極的にとることが推奨されています。

とはいえ、どの食べ物からどれだけ取ればいいのかは具体的にはよく分からないですよね。

この記事では幼児期に必要な栄養素である『鉄分』の役割や必要な量を管理栄養士である筆者が解説しています。

目次

幼児期に鉄が大切な理由

急激に成長する幼児期は血液をたくさん作るため多くの鉄が必要です。

鉄分が不足すると、ヘモグロビンをつくることが難しくなり、酸素を体のすみずみまで十分に供給できなくなります。

体内の酸素が不足すると以下のような症状が出ます。

  • 顔色が悪くなる
  • めまい
  • たちくらみ
  • 集中力が散漫になる
  • イライラしやすくなる

また、鉄分不足で体内の酸素が減った結果、免疫細胞がエネルギー不足になるため免疫力の低下が起こります。

体のさまざまな不調を引き起こすため、鉄は十分にとるようにしましょう。

幼児期に必要な鉄の量は?

幼児期に必要な鉄の量を解説します。

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男児女児
年齢等推定
平均
必要量
推奨量目安量耐用上限量推定
平均
必要量
推奨量目安量耐用上限量
1~2(歳)3.04.5 253.04.5 25
3~5(歳)4.05.5 254.05.5 25
6~7(歳)5.05.5 304.55.5 30
厚生労働省『日本人の食事摂取基準(2020年版)』より作成
推定平均必要量、推奨量、目安量、耐用上限量:mg/日
耐用上限量とは健康障害をもたらすリスクがないとみなされる習慣的な摂取量の上限。

幼児は食べムラが多いので、『推奨量』をとることが難しい場合もあります。

まずは『推定平均必要量』を満たせるように鉄分の多い食材を組み合わせていきましょう。

鉄は『耐用上限量』が決められていますが、吸収率されづらい栄養素のため、普通に食事をしていれば気にしすぎる必要はありません。

用語解説
推定平均必要量日本人の50%において、性別・年齢ごとにその量を摂取すれば、栄養素・エネルギーが不足になることはない、と定められた量。
推奨量ほとんどの人が必要量を満たす量。
目安量ある一定の栄養状態を維持するのに十分な量。
耐用上限量健康障害をもたらすリスクがないとみなされる習慣的な摂取量の上限。
目標量生活習慣病の予防のために現在の日本人が当面の目標とすべき摂取量。

鉄分の種類を解説

鉄分には『ヘム鉄』と『非ヘム鉄』の2種類があり、体への吸収率に大きな差があります。

吸収率に差がありますが、あまり細かいことは気にせず、鉄分は積極的にとりましょう。

ヘム鉄

ヘム鉄は赤身の肉や魚などに多く含まれ、タンパク質と結合した状態で存在します。

非ヘム鉄に比べて、

  • 体内での吸収率が高い(15~25%)
  • 一緒にとる食べ物の影響を受けにくい
  • 胃壁や腸管を荒らしにくい

という特徴があります。

非ヘム鉄

鉄はミネラルのなかでも吸収率が低い成分ですが、特に低いのが非ヘム鉄。

非ヘム鉄は、小松菜やほうれん草などの野菜、納豆や豆腐などの大豆製品に多く含まれている鉄成分です。

ヘム鉄と異なり、タンパク質に結合していません。

日本人が食事から摂取する鉄の85%以上が吸収率の低い非ヘム鉄です。

非ヘム鉄は以下のような特徴があります。

  • 吸収率が低い
  • 胃壁や腸管を荒らしやすい
  • 一緒にとる食べ物の影響を受けやすい

非ヘム鉄の吸収率を高めるには、ヘム鉄を利用したりビタミンCやクエン酸と合わせてとるようにしましょう。

鉄分を多く含む食材

鉄分を多く含む食材を紹介します。

動物性食品、植物性食品どちらにも鉄は含まれており、一汁三菜のようにバランス良い食事をとると1日に必要な鉄を摂取しやすくなります。

動物性食品

動物性食品はヘム鉄を多く含み、なかでもレバーやあさりの水煮には鉄が比較的多く含まれています。

食品
豚レバー(生)13.0mg
鶏レバー(生)9.0mg
牛レバー(生)4.0mg
牛肉(生・赤身)2.8mg
砂肝(生)2.5mg
まいわし(生)2.1mg
かつお(生)1.9mg
まぐろ(生・赤身)1.8mg
あさり 缶詰 水煮30mg
鶏卵(ゆで)4.7mg
可食部100gあたりの含有量
日本食品標準成分表2020年版(八訂)をもとに作成

植物性食品

野菜類や大豆製品にも意外に多くの鉄分が含まれています。

食品
ほうれん草2.0mg
小松菜2.8mg
枝豆2.7mg
そら豆2.3mg
納豆3.3mg
木綿豆腐1.5mg
厚揚げ2.6mg
がんもどき3.6mg
豆乳1.2mg
ピュアココア14.0mg
可食部100gあたりの含有量
日本食品標準成分表2020年版(八訂)をもとに作成

幼児が1日の中で鉄分をしっかりとるコツ5選

幼児の体に重要な鉄を効率よく吸収する方法を解説します。

鉄鍋や鉄球を使う

調理で鉄のフライパンや鉄鍋を使用すると、食品に吸収されやすい鉄分が溶け出し効率よく鉄がとれます。

毎日のように飲む麦茶や白湯などを沸かすときに鉄のヤカンなどを使ったりすると、手間もありません。

とはいえ、「鉄鍋は重いし収納に困る」という方には鍋に入れてお湯などを沸かせば鉄がとれる、『鉄球』も販売されています。

デザインも豊富で気軽に活用できるため、鉄を効率よくとりたい方におすすめです。

吸収率を高める栄養素を同時にとる

植物性の『非ヘム鉄』は吸収率が悪い鉄分ですが、『ビタミンC』や『クエン酸』を一緒にとることで吸収率を上げることができます。

ビタミンCは柑橘系やキウイなどの果物はもちろん、野菜ではキャベツやじゃがいも、ブロッコリーなどに、『クエン酸』はレモンや梅干しに多く含まれています。

ただし、ビタミンCは熱に弱いため生で食べるか、できるだけ短時間で調理したものを食べるようにしましょう。

吸収率を下げる栄養素を同時にとらない

植物性の非ヘム鉄には一緒にとると吸収率が悪くなる食品があります。

食物繊維

水に溶けない『不溶性食物繊維』と一緒に非ヘム鉄をとると吸収率は下がります。

ただし、食物繊維は日本人が不足しがちな栄養素なため、食事の範囲内であれば心配する必要はありません。

タンニン

紅茶や煎茶に含まれる『タンニン』は非ヘム鉄の吸収率を下げます。

子どもが飲む機会は少ないとは思いますが、食事と一緒に飲むのは麦茶や水にしましょう。

食品添加物

ハムやソーセージなどに含まれる食品添加物である『リン酸ナトリウム』は鉄の吸収を妨げるので、できるだけ入っていないものを選ぶと良いでしょう。

腸内環境を整える

腸内に存在する以下の細菌が、鉄の吸収を助けていることが東京工科大学の研究チームにより明らかにされました。

鉄の吸収に関係する腸内細菌
  • 大腸菌
  • 酪酸菌
  • 乳酸菌
  • ビフィズス菌

腸内環境が悪いと悪玉菌が体内に取り込んだ鉄などのミネラルを奪ってしまうため、吸収率が下がります。

ヒトの腸内環境は3〜5歳頃に決まると言われているため、幼児食でも腸内環境を整える食材を積極的につかいましょう。

牛乳と一緒にとる

牛乳の中に含まれるたんぱく質である『カゼイン』は、体内で消化されると『カゼインホスホペプチド(CPP)』という物質を作ります。

CPPはカルシウムや鉄などのミネラルと結びつきやすいため、結果として体への吸収率を高めることができます。

鉄分は吸収率が悪く、動物性のヘム鉄で約20%、植物性の非ヘム鉄で数%ほどしかありません。

しかし、牛乳と一緒にとることでCPPの働きにより鉄の吸収率を高める事ができます。

幼児食に鉄分が大切な理由まとめ

鉄は不足すると貧血だけでなくイライラしやすくなるなど様々な不調を起こすため、重要な栄養素。

効率的に摂取したいなら、動物性のヘム鉄をメインにとると良いでしょう。

とはいえ、植物性の非ヘム鉄は吸収率が悪いものの、野菜や大豆製品なので幼児は食べやすい食品が多いです。

ビタミンCやクエン酸が含まれている食品と一緒にとり、非ヘム鉄でも吸収率を高めましょう。

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