こんな疑問に答えます。
「子どもは塩分を控え、できるだけ薄味にしましよう。」という話を育児本や栄養士から聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。
とはいえ、「どのくらい薄味にしたら良いか」や1日の塩分の目安量がどのくらいなのか、よく分かりませんよね。
この記事では、幼児が塩分を控える理由やとり過ぎないコツ、幼児が1日にとってもよい塩分量の目安を解説しています。
幼児が塩分を過剰摂取するリスク3つ
幼児が塩分を過剰摂取すると以下のような問題があります。
順に解説します。
腎臓に負担がかかる
幼児の腎臓はまだ未発達。
成人の腎臓と比べ、塩分やその他の老廃物を処理する能力が低いため、塩分をとり過ぎると腎臓に負荷がかかりすぎてしまいます。
塩分はとり過ぎると高血圧を招いたり、体内の水分バランスを崩してしまうため、腎臓は必要以上に働かなくてはなりません。
長期にわたって塩分をとり過ぎた結果、腎臓に障害が起こり、腎不全などを引き起こす可能性が高まります。
味覚の形成を妨げる
幼児期は味覚が非常に敏感な時期。
過剰に塩分を摂取し続けることで、味を感じるセンサーが『塩味』に対して鈍感になり、通常の食事の味を薄く感じてしまい、より濃い味を求めるようになります。
幼児期は食習慣が形成される重要な時期で、塩分の多い食べ物に慣れてしまうと生涯にわたって高塩分の食事を好む場合も。
また、家族全体で塩分の多い食事を摂る習慣があると、幼児もその影響を受けやすくなるため、適度な塩分量を守ることが健全な味覚形成に繋がります。
将来的に生活習慣病のリスクが増加する
塩分のとり過ぎは将来的に以下のような生活習慣病のリスクが増加します。
- 高血圧
- 腎疾患
- 糖尿病
- 心血管疾患
「高血圧や腎疾患は分かるけど、糖尿病は砂糖のとり過ぎで起こるのでは?」と思う方もいるのではないでしょうか。
カンタンに解説します。
塩分のとり過ぎで高血圧になると血管に負担がかかり、動脈硬化を引き起こします。
動脈硬化がおきた結果、血糖値をコントロールするホルモンである『インスリン』の効き目も低下。(インスリン抵抗性が高まる)
インスリン抵抗性が高まると、細胞や筋肉の中に糖を取り込みづらくなり、血液中に存在する糖分の量が増えて血糖値が上がってしまうのです。
また、塩分が多い食事は高カロリー・高脂肪の食事であることが多く、肥満を引き起こしやすいです。
肥満も『インスリン抵抗性』を高めるため、糖尿病のリスクが高まります。
幼児期の食塩摂取量の目標量
幼児期の食塩摂取量の目標値は以下のとおり。
性 | 男児 | 女児 | ||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
年齢等 | 平均 必要量 | 推定推奨量 | 目安量 | 耐用上限量 | 目標量 | 平均 必要量 | 推定推奨量 | 目安量 | 耐用上限量 | 目標量 |
1~2(歳) | 3.0g未満 | 3.0g未満 | ||||||||
3~5(歳) | 3.5g未満 | 3.5g未満 | ||||||||
6~7(歳) | 4.5g未満 | 4.5g未満 |
推定平均必要量、推奨量、目安量、耐用上限量:mg/日
耐用上限量とは健康障害をもたらすリスクがないとみなされる習慣的な摂取量の上限。
1食あたり1g程度の塩分におさまれば、目標量を達成することができます。
また、子どもは1度に食べられる量が少ないことが多いため間食(おやつ)も必要。
おやつを含めて1日の塩分摂取量を目標量以内におさめられるようにしましょう。
用語解説
推定平均必要量 | 日本人の50%において、性別・年齢ごとにその量を摂取すれば、栄養素・エネルギーが不足になることはない、と定められた量。 |
推奨量 | ほとんどの人が必要量を満たす量。 |
目安量 | ある一定の栄養状態を維持するのに十分な量。 |
耐用上限量 | 健康障害をもたらすリスクがないとみなされる習慣的な摂取量の上限。 |
目標量 | 生活習慣病の予防のために現在の日本人が当面の目標とすべき摂取量。 |
幼児食で使う調味料に含まれる塩分量
幼児食で主に使う調味料に含まれる塩分量を簡単にまとめました。
小さじ(5ml) | 大さじ(15ml) | |
---|---|---|
食塩 | 6.0g | 18.0g |
濃口しょうゆ | 0.9g | 2.6g |
薄口しょうゆ | 1.0g | 2.9g |
みそ | 0.7g ※種類によって異なる | 2.3g ※種類によって異なる |
中濃ソース | 0.3g | 1.0g |
ウスターソース | 0.5g | 1.5g |
とんかつソース | 0.3g | 1.0g |
お好み焼きソース | 0.3g | 0.9g |
オイスターソース | 0.7g | 2.2g |
ケチャップ | 0.2g | 0.6g |
マヨネーズ | 0.1g | 0.3g |
めんつゆ(ストレート) | 0.2g | 0.5g |
めんつゆ(3倍濃縮) | 0.6g | 1.8g |
ポン酢しょうゆ | 0.5g | 1.4g |
すき焼きのタレ | 0.5g | 1.5g |
焼き肉のタレ | 0.4g | 1.3g |
和風ドレッシング | 0.2g | 0.7g |
フレンチドレッシング | 0.1g | 0.4g |
中華ドレッシング | 0.3g | 0.8g |
コンソメスープの素(固形) | 2.4g(1コ5.3gの場合) | |
コンソメスープの素(顆粒) | 1.3g | 3.5g |
和風だしの素(顆粒) | 1.1g | 3.2g |
中華だしの素(顆粒) | 1.2g | 3.6g |
鶏ガラスープの素(顆粒) | 1.2g | 3.6g |
バター | 0.1g | 0.2g |
マーガリン | 微量 | 0.2g |
幼児食で塩分のとり過ぎを抑えるコツ6つ
幼児食で塩分のとり過ぎを抑えるコツは以下の6つ。
では、解説していきます。
薄味の料理を心がける
子どもの頃から薄味に慣れていると、大人になってからも塩分控えめの食事を好むようになります。
塩を使う料理では最初に少量の塩を加え、味見をしながら少しずつ調整しましょう。
出汁や昆布、鰹節などを使って、旨味をしっかり出すと塩分控えめでもおいしく感じます。
素材のうまみを活かす
新鮮な食材を使用し、そのままの味を引き出すことで、塩分を多く使わなくてもおいしい料理が作れます。
とくに『蒸し煮』は野菜本来の甘味が引き出され、味を付けなくてもおいしく食べられるでよう。
カリウムを含む食品を食べる
カリウムはナトリウム(食塩)の排出を促すため、塩分のとり過ぎを防ぐ役割があります。
- バナナ
- ほうれん草
- じゃがいも
- トマト
緑黄色野菜やいも類にカリウムは多く含まれています。
とくにバナナは手軽に食べられるのでおすすめです。
ハーブや柑橘類などを料理に取り入れる
ハーブやレモンなどで料理に風味をプラスすると、少ない塩分量でもおいしく食べられます。
ハーブやレモンの効果
- 食欲を刺激する
- 食事の満足感を高める
- 特定の味覚を強調する
- 全体の味を引き締める
料理に酸味や香りが加わることで、特定の味覚を強調し、全体の味を引き締めることにもつながります。
料理に香りをプラスし、食欲を刺激するハーブやレモンを上手に使って使用する塩分の量を減らしましょう。
加工食品を減らす
加工食品には塩分が含まれていることが多く、日常的に摂取することで塩分過多になりやすいです。
とはいえ、加工食品であるハムやソーセージはカンタンに調理でき、子どもが好きなことも多いため全く食べないということも難しいのではないでしょうか。
週1~2回、2~3本にするなど量を調節し、食べすぎないようにすると良いでしょう。
栄養成分表示を確認して購入する
ほとんどの市販の食品には『栄養成分表示』が記載されており、使用されている食塩の量を知ることができます。
・画像挿入
類似商品でも塩分量に差があるため、できるだけ食塩含有量の少ない商品を選ぶと良いでしょう。
まとめ
塩分は体にとって重要な成分ではあるものの、幼児は必要量が少なく、大人と同じ食事をとってしまうと過剰摂取になります。
幼児の月齢によって1日にとれる塩分量は変わりますが3.0〜4.5g/日を目指しましょう。
1食あたり1gが目安です。
子どもは一度、濃い味に慣れてしまうと素材そのままの味付けに戻すのは難しいです。
離乳食から薄味を続け、子どもの健康な発達と食習慣を守りましょう。